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2014年3月

2014年3月25日 (火)

純愛のクレッシェンド

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 ただいま恋愛中、もしくは愚かにして切ない恋愛の諸相・第2幕第3場
 「少女の欲望」


 ゆっくり回っているシーリングファンに徐々に焦点があってきた。
 知らない間に眠ってしまっていたらしい。でも身体の奥の方のひりひりした痛みが、それが夢ではなかったことを教えてくれる。
 遠くで聞こえるのは、雨音。それともシャワーの音だろうか。

 
 済んでしまえばあっけなかったな。

 
 突然の雨は言い訳だった。
 「服が乾くまで、ちょっと雨宿りして行きましょう」。


 自分でもびっくりするくらい、その言葉はさらっと出てきた。
 別に用意してきたセリフじゃないのよ。練習だってしてない。だっていきなりの雨でびしょびしょなんだもの、このままじゃ風邪ひいちゃうわ。しょうがないじゃない。

 
 彼は驚いただろうか。


 表情は見えなかったけれど、その瞬間つないでいる彼の手から、何かが流れ込んで来たのがわかった。
 雨を避けてビルの軒を伝いながらたどり着いたのは、ふだんは立ち寄らないようなエリア。けばけばしいファサードの濡れた人工大理石に点滅する赤いネオンが反射していた。一瞬のためらいの後、彼は私の手を引いた。
 雨宿りをするには余計なものがずいぶん多いこの部屋に。


 彼は驚いたに違いない。


 私の中にあんな私がいることを、彼は驚いたに違いない。
 でも私はちっとも驚いていない。

  
 淡い憧れや胸震わせる思い。目があっただけで薄紅に染まる頬。
 私たちのそういったものを、男の子たちは清らかなもののように思っている。
 うん、清らかなのはマチガイないけれど。
 でもそういった清らかなものの果てには「これ」が待っているってことを、私たちはとっくの昔にに知っていた。今日この日が来ることを、ずっと前から知っていた。


 だから私は、自分にちっとも驚かなかった。
 ただ、思ってたよりあっけなかっただけ。


 窓の遠くで稲妻が光り、ずいぶんしてから雷が鳴った。
 彼が近づいてくるのが聞こえる。

 
 今はもう少しだけ眠っているふりをしよう。
 服がすっかり乾いてしまうまで。


--

   愛の雫を/たった一粒/与えられるだけで

   枯れた心が/息するように/女は開く


  「7時12分」に「春が来るまで」。
 じれったいほど幼い恋が続いたと思ったらいきなりこんな大人の恋。
 いやいや、「いきなり」なんて思うのは男だけかもね。
 ひょっとしたら女の子にしてみれば、こんな恋も「純愛」の範疇。
 
 
 
 

2014年3月20日 (木)

ライブはクセになる

 “[NOiD]” vol.32@club Lizard YOKOHAMA

 先週水曜にオペラ、木曜にでんぱ組incとライブが続いたら、なんかクセになっちゃったみたい。
 ということで今週はclub Lizard。
 メインのEVERLONGをはじめ、バンドがいっぱい出てるけど、お目当てはトライアンパサンディ略称トラパ。
 クールでキュートでエモいG-YUNcoSANDY(ジュンコさんディ)がボーカル。


 前売りでいい番号がゲットできたのでヨシヨシと思ってたのだけれど、渋滞に巻き込まれ開場に約10分痛恨の遅刻。入場始まってるよおいおいと思いきや、まさかのガラガラ。


 キャパ300のコテイなハコ(←「定員300名の小規模なライブハウス」ってことですね)の、後ろ半分は物販用に仕切ってあって、それでもスカスカ。
 ここんとこシアターやでんぱ組の現場行ってたから、ライブ会場はフルハウスが当然って思い込んでたけど、そうだよな、マイナーなバンドの現場ってこんなもんが普通だったよな。

 
 それでも三々五々集まってくる客は、でんぱよか若いくらい。
 おっさん浮いてる?
 浮いてる浮いてる。浮いてはいるがなに構わんよ。ライブに年齢やスタイルは関係ねえぜ(←ちょっとワルくなってますね)。
 

 やがて照明が落ちて前座扱いのバンドが登場。
 客は少ないのにステージライトを浴びてテンパってる様子がありありと見てとれる若い子たち。


 上手いか? そんな上手かねえな。
 音はでかいか? でかい。うるさいほどでかい。
 熱いか? うん。間違い無く熱い。
 伝え方も何を伝えたらいいかもまだ分からないけれど、何かを伝えたくて仕方ない。そういう熱さだ。おっさんになるとねえ、伝え方も伝える中身もあるんだけど、誰かに伝えるのがメンドくさくなるんだよ。俺だけわかってりゃいいやあって。


 熱くてキモチよかったぞ若者。


 トラパは3番目に登場。
 客はやっぱり少なかったけど、おかげで最前2歩後ろで跳んだり跳ねたり叫んだり出来ました。モッシュがはじまったら緊急退避したけどね。


 休憩中にはG-YUNcoさんが物販に登場、Tシャツ買って握手しちゃった。


 それにしても予想以上にちっちゃいフロアとステージだった。
 てか最前とボーカルマイクまでの距離50cm。手伸ばせばマイク奪える距離。
 ホントにここでBiSやんのか?
 てか良番引いちゃった俺は無傷で生還できんのか? 

 
 とりあえず壊れてもいいメガネ作んなきゃ。

2014年3月18日 (火)

春が来るまで4

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 ステージのこと。


 前曲「7時12分」のメンバーがはけると、舞台には黄色い花をまとった2人。あれはタンポポなんでしょうか。背中には羽根も生えてます。可愛らしい衣装。あの羽根、「蜂」説もあるんだけど、チョウチョだよね? 
  

 オリジナルのA4は、大島&星野(念のため今さらだけど大島ってのは大島麻衣のことだよ。優子さんを名指すときは大島(優)または大島優子。佐藤といえば佐藤ゆかり。渡邊はTeam Aの志穂、渡辺は麻友)。大人っぽい「春」なんだけど、この時大島19歳、星野21歳だったんですね。

 
 出だしから大島は涙目。
 収録当日は2007年6月26日。
 A4の千秋楽、Team A最後の日(になるかも知れなかったんですよね、当時は)に加え、大島の親友、星野の「卒業」の日でもありました。
 大島と星野、この2人の絆はとても強くかったそうです。
 この曲、どちらかが公演を休んだ時は代役を立たず、ソロで歌っていたとのこと。大島と星野2人だけの曲を歌うのもこの日が最後でした。


 しかも客席は、この時のために配られたサイリウムで黄色一色。
 そりゃ涙腺も弛みますわね。
 残念ながら公演DVDの歌声は「かぶせ」で、当日の大島の歌声を聞くことはできませんが、大島の名誉のために申し添えるならば「ソロ時、涙声であぶなくなるも、持ち直す」とはメモリスト・さむ氏のお言葉。
 大島、キュートな顔に似合わずハスキーな声です。


 余談ながらこの曲の2人はAKBを辞めた後、2人ともソロで曲を出しました。
 大島の声は伸びやかで張りがあり、星野のそれはしっとりとして心に沁みます。
 この2人のデュエットを生で聴けた人は幸せだよなあ。


 わずか4ヶ月、31回で千秋楽となったオリジナルのA4公演「ただいま 恋愛中」でしたが、ひまわり組公演(H1、H2)が終了した後リバイバルされます。それも約半年で終了しました。


 それから5年後の2013年11月、「ただいま 恋愛中」公演はNMB48 Team BII2として甦ります。
 Team BII、難波ではちょっと影の薄い、でも勢いはあるTeam 。


 「春が来るまで」を歌っているのは、太田夢莉と久代梨奈。
 大島ポジが久代、星野ポジが太田。どちらも1999年生まれだって。A4の千秋楽の時にはまだ小学校1~2年生だった2人です。これを書いている時点で、14~15歳の中学生コンビ。
 それでも結構堂々としているのよ。この2人。
 

 初日からずっと見ています。そうすると情が移るね。
 大島星野には申し訳ないが、僕の頭の中では「春が来るまで」と言ったらもう太田久代だもの(なんだいさっき「この2人のデュエットを生で聴けた人は云々」と言ってたくせに)。


 特に久代。
 ちょっと切れ長の目の、難波には珍しい正統派のべっぴんさん。だからこそ埋没しがちなのかもしれません。


 時々「7時12分」のあっさんポジに入ることがある(そういう時は「春」の星野ポジに研究生の明石奈津子が入り、太田が大島ポジにスライドします)んだけど、そこではふつうにカワイイカワイイお嬢ちゃんで、そんなに心を惹かれることはありません。
 でも「春」の久代はなーんかいいんだよねえ。


 基本は笑顔。
 だいたいは微笑みながら歌っているのですが、要所要所で「切なさ」を表現しようとしています。そう、この歌ってすごく切ない歌なんですよね。しかもそれをあんまり表に出しちゃいけない。


 好きだけど、その気持ちを伝えてはいけない。
 大人にしてみれば、たわいも無い理由なんでしょう。
 でもその時の当人にしてみれば深刻なこと。思春期にはそういうことが山ほどありましたっけ。


 第2スタンザのサビ前、「どこかで会えるかな/山茶花の咲く道で」は久代パート。歌いながら上手側から下手に移動し、太田との位置が入れ替わります。


 その後の「私はきっと」から「微笑みは胸の奥」までは太田パートで、久代は太田の下手側にいます。
 この歌っていない時の久代の表現は、たいていの中継では映っていません。まあ太田のソロパートだからしょうがないんだけどね。


 ただカメラ割り自体は固定されていないようで、時々この場面の久代が見切れていることがあります。
 たとえば2014年1月4日。この日Team BIIは新春特別出張公演と称して、幕張にあるよしもと幕張イオンモール劇場のステージに立ちました。
 そのせいか、いつもの劇場とカメラ割りがずいぶん違っていて、太田パートでの久代の表情がしっかり映っています。
 

 この時の久代。
 最初は微笑みを浮かべているのですが、「微笑みは胸の奥」の歌詞にあわせるかのように次第に笑みが消えていき、切ない表情に変わります。相手に自分の気持ちが伝わってしまわないように、微笑みすら堪えようとする女の子のいじらしさが伝わってきます。
 

  サビの「告白できれば楽なのに」はユニゾン。久代はその一瞬前にマイクを左手から右手に持ちかえます。ですからサビのフリは太田と鏡面対称。サビで鏡面対称にする演出、「禁2」でもありましたね。このさりげないマイク持ちかえるとこを見るのも好きなんですが、やっぱりなかなか映りませんね。あ、2014年1月29日は赤澤久代合同の誕生日イベントでしたので、映ってました。


 サビの直後もいいです。


 「楽なのに」とサビを歌い終わった瞬間、久代はやや下手を見ています。太田パートの「言葉じゃ伝わらない」にあわせて久代は上手を向くのですが、この時の目の表情。
 「残心」という言葉がありますが、下手に心を残しながら、すっと上手に向き直る。はじめ見た時は「うおっ」とか声が出ちゃいましたよ。「何だ今のは」って。
 その直後、もう一度下手に向き直るのですが、この時も上手に心を残した感じ。
 日によっては、ぎりぎりまでためてから断ち切るようにを向くこともあります。


 久代、やるなあ。

 
 相棒の太田はここまでは出来ていない。もうちょっとあっさりしてます。
 もっとも2人とも同じだと暑苦しいかも知れませんが。


 是非下手前方に座って、生で見てみたいなあ、この2人の「春」。

2014年3月15日 (土)

立ち見3列目で観戦!

 はい、ご明察。
 シアターはこないだお招きいただいたばかりだから別現場です。
 昨日はオペラ今日はでんぱ。


 でんぱ組inc.「ワールドワイド☆でんぱツアー2014~圏外にはさせない!電波エリア拡大中!!!~@CLUB CITTA'」


 ツアー初日のZEPP DIVERCITY以来3ヶ月ぶりのでんぱ組でした。


 秋葉原のシアターって思った以上におっさん多いでしょ。抽選前に見回すと、もちろん若者も多いんだけど、明らかに還暦過ぎって人もいるでしょ。だからいったん勇気を振り絞って警備のあんちゃんに「よっ」ってやって7階のエスカレーター登ると、もう何かアウェイ感はないんだよね。


 でも「でんぱ組inc.」、主力はどう見てもアンダーサーティーでしょ。先鋒はピンチケくんでしょ。


 ライブ始まるまでの間の、おっさんちょっと場違い感は否めないよね。
 せめてでんぱTシャツ着りゃいいんだけど、諸般の事情でそうもいかず。
 開幕前の期待でピンチケくんたちが盛り上がる中、じっと腕組み目は半眼視線は前方やや下。下手すりゃホントの地蔵だこりゃ。


 でもそれも幕が開くまで。
 音が鳴りさえすりゃこっちのもん。
 おじさんは君たちが産まれるずっとずっと前からこうやってライブで拳突き上げてたんだかんね。


 飛んだ跳ねた大声出した。
 ここイチバンじゃ両手に大光量4本サイリウム。
 これもまたあっと言う間の2時間とちょっとでした。


 比べてみると、つくづくシアターはお上品だなあ。


 こないだ最前での観戦ではじめて知った事実。
 客があらかた入った頃合いに最前の席と舞台との間の床に、一本のロープがひかれてテープで固定されるの。で、スタッフが「このロープから先に入っちゃだめですよー」って注意をするの。
 ちょっと足を伸ばせば届く距離にひかれた一本のロープ。でもこっから先は聖域。

 
 物理的にはなんの障壁でもないが、どんなに盛り上がったって、決してそこを越すことを許されないライン。
 いわば結界だね。

 
 この結界だけじゃ無い、さまざまなルールがシアターを支配している。
 モッシュどころか立ち上がり・移動の禁止。
 サイリウムの長さ、明るさの制限。
 サイリウムを振る高さの制限。
 大きなフリの禁止。


 シアターにルールができあがるまでに、紆余曲折があったことは当時の様々な記録から読み取れる。
 もっともそれらを読まなくても、あの狭さの中にあれだけの人数を詰め込んで、あの近さでライブを安全に行うことの困難さは、容易に想像できる。
 持続的な興業の最低限の目標は「誰もケガをしないこと」。もしあのルールが守られなかったら、あっと言う間にシアターの秩序は雲散霧消し、あの場所は閉鎖されてしまっていただろう。 


 それに、大光量のでかいサイリウムを天に届かんばかりに振り上げなくても、その場で取り憑かれたように踊り狂わなくても、シアターは十分に楽しい。
 周りの人にぶつからないように縮こまった手でするちっちゃいフリコピだって慣れりゃ味わい深い。

  
 でもねえ、相笠とか西野とか平田とか岡田(奈)とか、モッシュありダイブありのオールスタンディングのステージで、自分らがどんだけポテンシャルあるのか体験させてやりたいなあ。
 演じる者と見る者が渾然となる瞬間の陶酔を味あわせてやりたいなあ。


 そんな風に思わせるでんぱ組inc.のライブでありました。

 
 もっとも「Mosh & Dive」じゃあモッシュもダイブも起きないだろうけどね。

2014年3月13日 (木)

死の都

死の都(←デフォルトで音が出ます)@新国立劇場


 タキシードの紳士がたくさんで華やか。初日恒例各国大使ご招待の日でした。
 でも最前には常連の近所のおばさま方がたくさん。
 「○○さんは今日はいらっしゃいませんねえ」「あらあたしこれ見たことありましたっけ、最近もの忘れが」。
 社交場と言うより井戸端。
 いつもの「オペラ座の怪紳士」は珍しく欠席。その代わり目があった常連のおばさまに「ねえ、そうじゃなくって?」って話を振られてしまいました。


 「死の都」。
 決してメジャーな演目ではありません。 
 本でつべで予習はしましたけど全く初見でした。
 20世紀を代表するという触れ込みのドイツ語オペラ。


 舞台はベルギーのブルージュ。奥さんを亡くした嘆きを抱え続ける主人公が、奥さんそっくりの踊り子と出会って云々かんぬん。
 亡き妻への忠誠と目の前にいる生きた踊り子への思いに引き裂かれそうになって云々かんぬん。
 踊り子との恋に落ちても、今度は踊り子と亡き妻との葛藤がはじまって云々かんぬん。
 「喪失」と「死と再生」と「回復」の感動的なドラマ云々かんぬん。


 なるほど美しい舞台であったし「マリエッタの歌」は心に沁みた。
 でもなあ、僕はもうちょっと大仰でアホアホでこてこてで浪花節なイタリアオペラが好きだなあ。

2014年3月11日 (火)

掌が語ること

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 3年が経った。
 テレビでは連日、あの日の記憶を呼び起こそうとしている。
 でも僕は、それを見ようとはしない。
 目を背けているつもりはない。
 僕には今の僕の生活があるんだ。他にやることがあるんだ。


 あれから3年。
 日々の暮らしの中、あの日のことを思い出すことはほとんどない。
 確定申告で「その寄付は震災関連の寄付ですか?」と尋ねられるくらいだ。


 あの日のことを思い出すのは、そう、シアターに招かれた時だけ。
 毎度の習慣になった、「お賽銭箱」へのささやかな寄付。
 その度にもらう「誰かのために」と書かれた小さなステッカー。
 そして、はじまりのチャイムの後に必ず流れる一言。


 「東日本大震災の被害に遭われた方に、心よりお見舞い申し上げます」。


 もうお決まりとなった言葉。
 わくわくしているお客たちの耳を素通りする言葉。
 それでも愚直にひたすらに繰り返す言葉。

 
 そして今日、彼女たちはその場所にいる。
 誰から聞かされなくても、僕はそのことを知っている。
 「また来ます」。
 彼女たちがそう約束したから。

 
 今日、彼女たちはそこにいる。


 忘れることと言い訳をすることに長けた大人たちの代わりに。
 僕の代わりに。

 
 歌い、踊り、笑いかけ、手を振り、
 癒えることのない傷を負った人々の手を、
 小さな掌で包んで癒そうとしている。
 僕よりもずっとずっと小さな掌で。
 愚直に。
 ひたすらに。

   掌で掴めるものなんて/たかが知れている
   指を大きく広げてみても/何かがこぼれてく
   それでも僕はこの掌/何度も差し出して
   目の前にある未来の砂を/そっとかき集めよう


 その小さな握手のひとつで、僕が彼女たちを誇りに思うには十分すぎる。


 ありがとう。
 僕は僕のできることをしよう。
 誰かのために。

 

2014年3月10日 (月)

春が来るまで3

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 いやもう、ホント春が来ちゃうね。


 「春が来るまで」で思い出した美しい四重唱のこと。
 「ラ・ボエーム」第3幕の4重唱「さらば甘い目覚めよ」。


 「ラ・ボエーム」。
 オペラなんだけど、わいもないお話と言えばそれまでです。


 19世紀半ばのパリ。
 7月革命で守旧派の王様を追い出してた「市民の王」ルイ・フィリップの治世。ごたごたはあったけど、活気のある時代だったのだろう。
 パリの屋根裏部屋で、若さと才能はあるけどお金と地位はない4人の若者が、その日暮らしだけど明るい生活を送っていた。
 詩人、画家、音楽家、そして哲学者。みごとに世の中の役に立ってないよね、みんな。

 
 ヒロインのミミ、本名はルチア。
 造花作りが本業だというけど、たぶん副業もある。
 「お祈りはするけど、教会のミサにはあんまり行かないの」って、神父様には評判の芳しくない「副業」のせいなんでしょうきっと。ミミって通り名も副業用なのかも知れない。


 詩人のロドルフォとミミがある夜出会い、愛しあう。そして別れ、もう一度会ったときにミミは死ぬ。たったそれだけのお話。あ、画家のマルチェルロとたぶん「副業」が本業のムゼッタがくっついたり離れたりもする。


 ミミは結核を病んでいた。
 ロドルフォはミミよりも先にそれに気づいた。
 当時結核は不治の病、貧乏な自分と一緒にいてはミミの命はあっという間に消え去ってしまう。幸いミミに懸想する金持ちの子爵がいる。自分と別れて、子爵に世話をして貰えば、ミミも少しは永らえることができるかもしれない。


 だからロドルフォはミミに別れを告げる。
 ミミもそれを受け入れる。たぶんそれは自分の命のためではなく、ロドルフォのため。口にはしないけれど、ロドルフォに病をうつさないためかもしれない。


 美しいデュエットのその後ろではマルチェルロとムゼッタが壮絶な罵りあいの末喧嘩別れ。
 「看板絵描き!」
 「マムシ!」
 「ヒキガエル!」
 「鬼ババア!」
 これもまあ、馬鹿馬鹿しいが恋の一幕。

 
 雪の降る中で抱きあうミミとロドルフォ。
 「さようなら、甘い朝の目覚め」とミミ。
 「さようなら、夢のような日々」とロドルフォ。


 でもねえ、もうちょっと、もうちょっとだけ一緒にいようよ。
 せめて、花の季節まで、一緒にいよう。


 冷静に考えてお互いのことを思うなら、さっさと別れた方がいい。
 何しろ二人の住む屋根裏部屋は北風が吹き込んで、ストーブには薪も無い。だからミミのからだを考えて別れるなら今すぐがいい。
 別れられなければ、一緒にいたいならいればいい。ミミの命を縮めることを覚悟しさえすれば恋を全うすることだってできる。


 でも二人の出した結論は、「別れよう、でも春が来るまでは一緒にいよう」だった。
 恋が導くどっちつかずの、愚かな決心。
 でも、誰も笑うことのできない愚かさ。

 
 ミミは歌う。
 「冬が永遠に続けばいいのに」。


 今のこの瞬間が永遠に続けばいいのに。


 人の世に恋がある限り繰り返されてきた、決して叶うことのない願い。

  春がやってくるまで/残ってて
  思いが降り積もる/恋の雪

 時も場所も、そして何より恋の成熟度が全く違うけどね。
 それでも恋は、恋。

2014年3月 6日 (木)

ただいま 恋愛中

 正直気持ちも少しだけ気持ちが萎えてたところもあった。
 「大組閣」だとかなんだとか、何か知らないところで話が進んでるみたいだ。
 何をどうしたいのか、恐らく誰もわかっちゃいないような感じだった(唯一、松村先輩の人事だけはほっとした)。
 

 何をやってたかというと、ずっとBIIの「ただいま恋愛中」ばかり見てた(あ、仕事もしてたけどね)。
 というか、歌ってないときの久代の表情ばかり探していた(「春が来るまで」のね)。
 ヲタはたくさんついているのだろうけれど、恐らくこの先大ブレイクすることはないであろう、1人の女の子の一瞬の表情ばかり。


 彼女たちが歌っていない時の表情が見たかった。
 なかなか映らないんだよねえ、歌ってない時の顔って。
 だからそれを見るには、そこにいかなきゃならないんだわ。
 そしてそこはちょっとばかし遠いんだよねえ。


 正直気持ちが少し離れかけていたんだと思う。
 毎日毎日送られてくる4か所の「そこ」の映像を義務的に×○□△*している日々。
 もうこのままフェイドアウトでもいいかな、なんて思ってる自分もいた。
 

 そんな時、ちきしょう、絶妙のタイミングで招待状が届きやがった。
 もとい、招待状を頂戴しました。
 横山チームA公演 矢倉楓子生誕祭。
 ユニット曲は違えど、その骨格は「ただいま 恋愛中」のセットリスト。

 
 観戦も9回目。抽選に関しては完全に悟りを開いてるつもりでした。呼んで貰えれば上等ですもの。
 抽選が始まっても動じることなく、シアターのしきたりも熟知した大人の顔で待ってたら、まさかの4巡目。「ええええー」とか言ってんでやんの。
 途端に足取りが速くなってしまって、入り口で係員のおにいちゃんに捕まってしまいました。
 噛んで含むように「お客さーん、走らないで下さい」。うひょー恥ずかしい。
 すまんすまん。僕も走ってるつもりはなかったんだよー。


 初めて見たがらがらのシアター。
 誰も座っていない最前の椅子。
 椅子に座るのは二度目、相変わらず狭っ苦しいけど、目の前には何もない。
 手を伸ばせば(いや、伸ばしませんよ伸ばしませんてば。怒られて追い出されたらヤダもん)そこはステージのカーテン。
 はじまるよーのチャイム。これいっつも外で聞いてたんだよなあ。
 ああ、この声はまゆゆだ。


--


 「Only today」
 スカっぽい明るいメロディに載せた、胸が締め付けられるように切ないリリック。
 今まで何回聞いたろ。
 最前で見ていたら、なぜだか鼻の奥がつんとして、渡辺と視線があった(ように思えたんだよ-)瞬間涙滂沱として禁ぜず。
 現場で泣くのは3回目でした(E公演初体験@TDC、シアター初体験、今度)。
 さすがのもう「初」はねえだろだいたい「初」の度泣いてどうすんだってことだよなあ、いいおじさんが。


 渡辺麻友
 僕はこれまでいわゆる「超選抜」の皆さんにあんましキモチを動かされなかった(てか、シアターでお目にかかってなかったんだけどね)。
 それが夕べのまゆゆ様にはやられました。参りました。蕩けました。
 「みんなの目線をいただきまゆゆ」って、目線吸い取られました。
 完全気持ちは高校生だもん。しかも童貞気味の(げろげろ)。 
 全てが誤解でキモチの悪い妄想であることは重々承知なんだけど、その瞬間渡辺と僕の気持ちが通じ合った(ように思えたんだよ-)。この「妄想喚起力」こそトップアイドルの証なんでしょうね。


 高橋みなみ
 げ、べっぴんさんでやんの。びっくりしちゃった(←失敬な)。
 「ジレンマ」見惚れちゃった。
 

 佐々木優佳里
 これまで4回もシアターで会ったことのあるゆかるん。
 最後に見たのは去年4月のパジャマドライブだった。
 ゆかるん大好きなんだけど、正直そのパフォーマンスは、ごめんちょっと「もっさり」してる印象だった。だから「ヒグラシ」とかならいいんだけど、「てもでも」で岡田(奈)と並んじゃったりすると、ちょっと差がついちゃうよなあって思ってました。「二人乗りの自転車」なんかではっちゃける瞬間がちらっとあったりもしたけど、長続きしないって言うか。
 それが夕べのゆかるんは全く別人。
 飛ぶの。跳ねるの。反りかえって伸びるの。浮いた瞬間のブーツの底と舞台板との距離が、明らかに他のメンバーより数センチは高い(つーか全然浮かないメンバーだっている)。最前だとこういうのよく見えるよねえ。
 「キレっキレ」とまではいかないけど、ゆかるんよく動く。最後まで。
 完全に佐々木優佳里ver.2じゃんか。
 士別レテ三日ナレバ刮目シテ相待スベシ。
 ましてや1年近くも見てないもの、舐めてはいけませんよ。


 「抱きしめられたら」
 名曲だよなあ。
 この頃のやすすって、ホントいい詞を書いてた。
 E2でずいぶん見た。金子小林高木のバージョン。
 でも今宵のこの曲、みんな最初っから肌露出し過ぎ。
 この曲って、見た目で「エロ」な印象強いけどそうじゃないんだよ。ホントは「エロの入り口で戸惑う女の子」なんだよ。
 リズムをシンコペーションぎみに刻むベースが特徴で、フリも決して滑らかじゃ無くて「stop & go」って感じの動き。
 それがまるで行きつ戻りつ戸惑っている女の子の内面を表しているような演出。キモチがだんだんたまっていって、サビのところで欲望が花開いていくコントラストの妙だってある。
 普段は真面目なお天気おねえさんのような女の子が、(恐らくは後ろめたい)恋に惑い導かれて乱れていく、そういうイメージ。
 うん。そうだよ、ちゆうよかNさんだよ。
 だから曲の頭っから肩をはだけてはいけないの。曲が進むに連れ徐々に露わになっていかなきゃ。
 肌見せりゃいいってもんじゃない。みるきーのも見たことあるけど、あれもはなっから出し過ぎ。
 金ちゃんこあみゆまなはもう少し出来てたぞ。


 矢倉楓子
 今日の公演の主役。
 下手最前は彼女のポジでした。ふうちゃんヲタのみなさんゴメンね。
 ちゃんと全力で「ふーっ」ってやったから許してね。


 「前しか向かねえ」
 なんだ糞曲じゃねえかって思ってたのにー。楽しかったじゃねえかちっきちょー。


 人生最短の2時間ちょいでした。
 いつになるか分からないけど、次シアターにお呼ばれされた時に最前じゃなったらがっかりしちゃうのかな。今はそれがちょっと心配です。
 

2014年3月 5日 (水)

下手最前列で観戦!

 まーたいつものヤツ、あれだ。
 別の現場かペラペラペラオだとお思いでしょうけど。


 でもホントに。


 AKB48シアターの。


 下手最前に座ってました。ほんの数時間前まで。
 帰宅して、まだ少し陶然としています。

 
 「Only today」、そりゃあ大好きな歌だけどさ、まさか流涙すると思わなかった。
 メンバー諸君もびっくりしたでしょう。最前でいい年のおっさんがだらだら流れる涙を拭いもせずじっと見てるんだもの。
 俺だってびっくりしたぞ。頭の鉢がいきなり開いたかと思ったよ。


 いろいろ書きたいけど、なーんも書けないや。
 今日はもう寝よ。
 リアルな今日にリセットされるまで儚い夢を見よ。充たされた心のまま。
 おやすみ。

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