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2014年3月25日 (火)

純愛のクレッシェンド

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 ただいま恋愛中、もしくは愚かにして切ない恋愛の諸相・第2幕第3場
 「少女の欲望」


 ゆっくり回っているシーリングファンに徐々に焦点があってきた。
 知らない間に眠ってしまっていたらしい。でも身体の奥の方のひりひりした痛みが、それが夢ではなかったことを教えてくれる。
 遠くで聞こえるのは、雨音。それともシャワーの音だろうか。

 
 済んでしまえばあっけなかったな。

 
 突然の雨は言い訳だった。
 「服が乾くまで、ちょっと雨宿りして行きましょう」。


 自分でもびっくりするくらい、その言葉はさらっと出てきた。
 別に用意してきたセリフじゃないのよ。練習だってしてない。だっていきなりの雨でびしょびしょなんだもの、このままじゃ風邪ひいちゃうわ。しょうがないじゃない。

 
 彼は驚いただろうか。


 表情は見えなかったけれど、その瞬間つないでいる彼の手から、何かが流れ込んで来たのがわかった。
 雨を避けてビルの軒を伝いながらたどり着いたのは、ふだんは立ち寄らないようなエリア。けばけばしいファサードの濡れた人工大理石に点滅する赤いネオンが反射していた。一瞬のためらいの後、彼は私の手を引いた。
 雨宿りをするには余計なものがずいぶん多いこの部屋に。


 彼は驚いたに違いない。


 私の中にあんな私がいることを、彼は驚いたに違いない。
 でも私はちっとも驚いていない。

  
 淡い憧れや胸震わせる思い。目があっただけで薄紅に染まる頬。
 私たちのそういったものを、男の子たちは清らかなもののように思っている。
 うん、清らかなのはマチガイないけれど。
 でもそういった清らかなものの果てには「これ」が待っているってことを、私たちはとっくの昔にに知っていた。今日この日が来ることを、ずっと前から知っていた。


 だから私は、自分にちっとも驚かなかった。
 ただ、思ってたよりあっけなかっただけ。


 窓の遠くで稲妻が光り、ずいぶんしてから雷が鳴った。
 彼が近づいてくるのが聞こえる。

 
 今はもう少しだけ眠っているふりをしよう。
 服がすっかり乾いてしまうまで。


--

   愛の雫を/たった一粒/与えられるだけで

   枯れた心が/息するように/女は開く


  「7時12分」に「春が来るまで」。
 じれったいほど幼い恋が続いたと思ったらいきなりこんな大人の恋。
 いやいや、「いきなり」なんて思うのは男だけかもね。
 ひょっとしたら女の子にしてみれば、こんな恋も「純愛」の範疇。
 
 
 
 

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